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472 墓所に燃ゆる火
墓所に燃ゆる火は江戸時代後期、森春樹の『蓬生談』に次のようなことが記されています。
「墓地に燃え出る火は亡者の念だという説があるが、そうではない。
なぜなら火葬の墓は燃えず、火はみな土葬の墓から燃え出る。
古い墓が多く、大地の火気が激しい地火日に埋葬した墓は必ず燃える。
多くは雨や曇天の夜である。
筆者が幼年の頃、小畑村に菊右衛門という大工がいた。
ある夜。
無縁墓から火が出ていたので、菊右衛門がそこを掘り返すと土の塊があって、それが燃えていた。
次の日。
よく調べると、それは蝋のようなものと土とが混じり合ったものだったという」
この墓所に燃ゆる火。
ロウセズして簡単には燃え出ませんでした。
・ロウセズ=蝋せず=労せず
・地火日=地に火の気があるので土を掘ることや植樹などを忌む日
・森春樹(もりはるき・1771~1834・国学者)
・『蓬生談』(ほうしょうだん・随筆)




