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468 空穂舟
空穂舟は江戸時代後期、橘南谿の「東遊記」に次のような話があります。
あるとき。
越後の今町の海岸に白木の箱作りの舟、空穂舟が流れ着きました。
海辺の者たちが集まって中を見ると、歳の頃16、7の少女が座っていて、そばには水が入った瓶と、菓子が入った箱がありました。
誰がどこから流したのかわからないでいると、少女が言いました。
「流されてから4度こうして流れ着きましたが、そのたびに突き流されてしまいました。どうかここに上げてください」
ところが海辺の人々は非情で、さらに災難に遭うことを恐れ、早々に舟を沖へ突きやると、みな逃げ帰ったといいます。
この空穂舟。
助け舟が出されることはありませんでした。
・助け舟を出す=人が困っているときに助ける
・橘南谿(たちばななんけい・1753~1805・医者)
・『東遊記』(とうゆうき・紀行、随筆)




