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460 鬼一口
鬼一口は、鬼が一口で人を喰うことをいい、平安時代、作者不詳の『伊勢物語』第六段「芥川の段」に次のような話があります。
その昔。
某男はもう何年も好きな女のもとへと通っていたのですが、身分の違いから結ばれることはありませんでした。
ある晩。
男はついに女を盗み出しました。
ところが逃げる途中、激しい雷雨に遭ってしまいました。
男は戸の開く蔵を探し出すと、その中に女をかくまい、自分は弓矢を手に蔵の前で見張り、夜が明けるのを待ちました。
明け方。
蔵から女が消えていました。
女がこの蔵に棲んでいた鬼に食われたことを知った男は、ショックで目の前が真っ暗になりました。
男はクラっときたのでした。
・クラっと=蔵へと=クラっと
・『伊勢物語』(平安時代に成立した歌物語)




