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443 一揃いの白骨
一揃いの白骨は江戸時代後期、速水春暁斎の『絵本小夜時雨』に次のような話があります。
その昔。
渋谷徳右衛門という武士は東国の古屋敷を拝領したのですが、屋敷の庭には古い大木があり、その木の下に美しい女が現れるようになりました。
ある日。
この大木を切ったところ、根の下に深い横穴が現れました。
徳右衛門の弟の徳之丞が横穴をのぞくと、そこには一人の美女がいて、その女に手を引かれて徳之丞は穴に入りました。
人々が驚いて穴を掘り崩すと3メートルほど下に数百年を経た一揃いの白骨があり、徳之丞の行方はわからずじまいでした。
この一揃いの白骨。
あの美女のもので、今もなお生前の美しい姿で現れていたのです。
骨のある女でした。
・骨のある=強くしっかりした気概を持つ
・速水春暁斎(はやみしゅんぎょうさい・1767~1823・浮世絵師、読本作者)
・『絵本小夜時雨』(えほんさよしぐれ・絵本読本)




