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441 乳母二人
乳母二人は昔話の一種で、平安時代末期の説話集『今昔物語集』に次のような話があります。
その昔。
四条の南に源雅通という人が住んでいました。
ある日。
雅通は我が子の泣き叫ぶ声と乳母のあわて騒ぐ大声を聞き、何事かと大急ぎで駆けつけると、そこにはまったく同じ姿の乳母が二人いて、左右から子の手足を掴んで引っ張り合っていました。
一方は狐か何かが化けたものだろうと、太刀を振り上げて斬りかかると、片われの乳母が一瞬にして消え失せました。
乳母が言います。
「怪しい女が現れて、若君を奪っていこうとしたところへ殿様が……」
この乳母二人。
その後、怪しい女が現れることはなく、またウバワレルこともありませんでした。
・ウバワレル=乳母割れる=奪われる
・『今昔物語集』(作者不詳・平安時代末期に成立の説話集)




