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426 品川の玉蜀黍
品川の玉蜀黍は怪異の一種で、これは江戸時代後期の浮世絵師、歌川春升の錦絵に次のような話があります。
弘化2年某月。
江戸は品川で、鶏の姿そっくりの玉蜀黍の実が見つかりました。
これが生えた畑の持ち主は、もともと1羽の鶏を大切に飼っていたのですが、その鶏は春に死んでいました。
このとき哀れに思った飼主は、鶏の死骸を畑に手厚く埋めてやっており、そこから生えてきたのがこの玉蜀黍だったといいます。
これは死んだ鶏の霊魂が、己を愛してくれた主人を慕ってこの地にとどまり、ついにその形を現したものだろうと噂されました。
この品川の玉蜀黍。
手で叩いてみたところ響くような良い音がしたといいます。
コーン。
・玉蜀黍=コーン
・錦絵=浮世絵、木版画の一種で多版多色刷り
・歌川春升(うたがわしゅんしょう・1843~1846・浮世絵師)




