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425 山おとろし
山おとろしという妖怪がおります。
日本アルプスの剣岳に棲んでいるという鬼で、仙台市出身の小説家、山田野理夫の著書『アルプス妖怪秘録』に次のようなことが記されています。
北アルプスの立山連峰の剣岳は大変険しく、明治40年に柴崎芳太郎の測量隊が登頂するまで、登頂の成功は記録されていませんでした。
それは剣岳に山おとろしが棲んでいて、登ろうとする者がいれば、襟首をつかんで放り投げたからだといわれています。
なお山おとろしは、明治維新後に善光寺の山門に棲み着いて、不信心者が山門をくぐろうとすると、やはり襟をつかんで通しませんでした。
この善光寺。
山おとろしにエリすぐられた者だけが山門を通れました。
・エリすぐられた=襟すぐられた=選りすぐられた
・山田野理夫(1922~2012・小説家、詩人)
・『アルプス妖怪秘録』(アルプスの民話)
 




