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424 遺念火1
遺念火は怪火の一種です。
遺念とは亡霊を指す沖縄の言葉で、男女が非業の死を遂げたあと、一組の火となって現れたといい、沖縄県に次のような話が伝わっています。
その昔。
ある女が人目を忍び、夜の山頂で恋人の男と密会を重ねておりました。
台風の夜。
今夜は暴風雨で来ないだろう。
男はそう思って山に行きませんでした。
ところが女は、暴風雨でも山に向かっていたのでした。
雨と風のなか。
女は男の不実をなじって自殺しました。
男はそれを知ると、自分の薄情さを悔やんで後を追って死にました。
それ以来。
山頂には同じ時刻に、二つの火が現れるようになったといいます。
この二つの火。
二人の非であり悲でもありました。
・火=非=悲
 




