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42 泥田坊
泥田坊という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にあり、目は片方、手の指は3本、泥田から上半身のみを出している姿で描かれています。
ある北国の地。
そこに一人の翁がいたのですが、子孫のためにと多くの田を買い集めていました。
翁の死後。
一人息子は遊びほうけ、しまいには田を売り払ってしまいます。
そんな道楽息子のことを怨み、翁の怨念は泥田坊に化身しました。
夜な夜な、泥田に上半身を出しては、
「田を返せー、田を返せー」
泥田坊は絶叫して息子をののしりました。
息子も黙ってはいません。
泥田に腰までつかって向かっていきます。
「田を返せー」
「黙れー」
それはまさに泥仕合でした。
・泥仕合=泥田=互いに醜く争うこと
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)




