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416 海の老婆
海の老婆は静岡県焼津市に次のような話が伝わっています。
その昔。
伊豆諸島の新島の近くに御根という島があるのですが、あるとき漁師がそこに錨を降ろして漁をしていました。
漁が終わって漁師が錨を上げようとすると、なぜかなかなか上がってきません。
そこで漁師が海に潜ってみたところ、錨の上に白髪の老婆が腰をおろしていました。
近づくと老婆が、「誰かにしゃべると、魚が獲れなくしてやるからな」と言って姿を消しました。
その後。
漁師の船は大漁が続きました。
ある日。
漁師は仲間の漁師に、つい老婆のことをしゃべってしまいました。
以来。
まったくの不漁続きとなりました。
この海の老婆。
イカリに触れたのです。
・イカリに触れた=錨に触れた=怒りに触れた




