401/924
401 数万の赤子
数万の赤子は江戸時代後期、唐来山人著『模文画今怪談』に次のような話があります。
ある夜更け。
某浪人が青山を通ったとき、赤子を抱いた女が寄ってきて「少しの間、この子を抱いてやってください」と頼んだ。
浪人が子を抱くと、女はそばの寺へ入っていった。
赤子はしきりに泣き、その口の中は火のように赤かった。
さらに赤子はだんだん重くなり、その重みに堪えがたくなったとき、女が戻ってきて子を受け取り、また寺の中に消えた。
浪人が怪しく思って塀越しに寺の中をのぞき見ると、そこには数万の赤子が群がっており、それらの赤子すべてが手を上げて踊っていた。
浪人はどうすることもできなかったという。
この数万の赤子。
お手上げでした。
・お手上げ=どうしようもない
・唐来山人(とうらいさんじん・1744~1810・戯作者、狂歌師)
・『模文画今怪談』(ももんがこんかいだん・怪談)




