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398 女郎蜘蛛1
女郎蜘蛛は江戸時代前期、荻田安静の怪談集『宿直草』に次のような話があります。
その昔。
ある武士が古宿に泊まると、深夜になって子供を抱いた20歳ぐらいの女が現れました。
その女が子供に言います。
「あれなるはそなたの父ですよ。さあ、行って抱かれなさい」
武士には身に覚えのないことでした。
女の正体を妖怪と見抜いて刀で斬りつけると、女はそれをかわして天井裏へと逃げ込みました。
武士は女を追いました。
すると天井裏には蜘蛛の糸が四方に向かって張られていて、その中心に1尺ほどもある蜘蛛がいて、天井には人間の骨が無数に転がっていました。
武士が刀を振り下します。
この女郎蜘蛛。
今度はイトもたやすく切れました。
・イトも=糸も=いとも
・いとも=非常に、きわめて
・荻田安静(おぎたあんせい・?~1669・俳人)
・『宿直草』(とのいぐさ・怪談集)




