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390 鬼石
鬼石は伝説の一種で、大分県由布市庄内町に次のような話が伝わっています。
その昔。
阿蘇野に美しい娘を持つ夫婦がいました。
あるとき黒岳に棲む鬼がやってきて、娘を嫁によこすようしつこく言ってきました。
夫婦は困って、「明日、一番鶏が鳴くまでに、権現様の下に石段を作ったら娘をやろう」と難題を出しました。
鬼は岩を割り、石段を積み上げていきました。
夜明け前。
あと一段になりました。
それを見た夫婦が知恵を働かせ、笠をパタパタと叩いて一番鶏の鳴きまねをすると、鬼は悔しそうに姿を消しました。
そのとき鬼が積み上げた石段は、今も権現様の下に残っているといいます。
この鬼。
一番鶏の鳴き声をトリマチガエタのでした。
・トリマチガエタ=鳥まちがえた=取りまちがえた
 




