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388 飛び物
飛び物は怪異の一種で、江戸時代後期、鈴木桃野著『反古のうらがき』に次のような話があります。
「天保初年。
四谷裏町の与力某宅で、人々が寄り合って碁を打った。
夜も更けて、各自帰ろうと外へ出たとき、ガンという音とともに何やら物が飛んできて、人々が連れ立っていた戸外の台所あたりに落ちた。
すぐに提灯を灯して周囲を探したが何もなかった。
翌朝。
主人があらためて調べてみると、台所の流し下の土に、紐のついた真鍮の大鈴が置かれるように落ちていた。
神前に掛けてあった鈴らしく、振る紐がついていたのだが、そんなものが流しに捨てられる道理もないことから、きっと前夜の飛び物だろう」
この飛び物。
キッチンと落ちていたのでした。
・キッチン=キッチン=きちんと
・きちんと=よく整って
・真鍮=黄銅
・鈴木桃野(すずきとうや・1800~1852・儒者)
・『反古のうらがき』(ほごのうらがき・随筆)




