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384 火事を防いだ稲荷
火事を防いだ稲荷は怪異の一種で、京都府与謝郡伊根町に次のような話が伝わっています。
大正3年の大晦日の夜。
新井の玉林寺が火事になり、火は延焼して近くの家々を次々に灰にしていきました。
その火は玉林寺から10間ほど離れた某家にも迫っていました。
そしていよいよ炎が某家に迫り来たとき、屋根先に稲荷神社ののぼり旗が立ち、続いて「ワーッ」という声が上がり、某家は塀を焦がしただけで火事を逃れました。
このときその場にいた全員がのぼり旗を目撃し、さらに「ワーッ」という声を聞いたといい、火事から救ってくれたのはその家の稲荷だといわれました。
この火事を防いだ稲荷。
塀を焦がしてしまったことをボヤいていたといいます。
・ボヤいて=塀を焦がして=ぼやいて
・ぼやいて=ぶつぶつ不平や泣き言を言う




