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377 ひくまた川の河童
ひくまた川の河童は江戸時代中期、作者不詳の『寓意草』に次のようなことが記されています。
武蔵の川越のあたりにひくまた川という小さな川があり、その川の近くに「ほうとう院」という寺がありました。
ある日。
この寺の馬を洗おうと、寺の下男が馬に乗って川に走り込んだところ、馬が暴れて水から躍り出ました。
このとき若者は落馬して気絶し、かたや馬は若者を残して厩に駆け戻りました。
その馬の手綱には、人の子供のようなものが絡みついていて、馬はそれを隅のほうへ蹴飛ばしました。
寺の下男たちが捕らえてみると、それは河童で、背中の甲羅が割れていたといいます。
下男が割れた甲羅を見て叫びました。
「コウラ大変や!」
・コウラ=甲羅=こーら
・『寓意草』(作者不詳・随筆)




