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372 狐女房
狐女房は異類婚姻譚の一種で、愛知県に次のような話が伝わっています。
その昔。
ある若い百姓は、行き倒れの娘を連れ帰って介抱してやりました。
その後。
娘は女房になり、やがて赤子も産まれました。
あるとき赤子が病気となり、つきっきりで看病をしたことで、田植えが間に合わなくなりました。
若者がそのことを話すと、翌日、田んぼに稲が植えられていました。
ただ稲は逆さまに植えられており、百姓がそのことを話すと女房は田んぼへと走り、その姿はいつしか白い狐になっていました。
稲は半分ほど正しく植え替えられていましたが、狐の女房は帰ってくることはありませんでした。
この狐女房。
百姓のもとにはもうイネナカッタのでした。
・イネナカッタ=稲なかった=居ねなかった




