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367 人面瘡1
人面瘡は怪異な病気で、江戸時代中期、作者不詳の怪談集『諸国百物語』に次のような話があります。
その昔。
ある男が下女に手をつけたことから、男の女房は嫉妬に狂って、その下女を殺害しました。
すると男の右肩に、口のある人面のような腫れ物ができました。
数日後。
女房も死んでしまいます。
今度は左肩にも人面瘡が現れ、二つの口が恨みごとを言ってくるようになりました。
あるとき。
男の事情を知った旅の僧が両肩の人面瘡に向かって経を唱えると、人面瘡の口から二匹の蛇が現れ出ました。
そこでこの蛇を塚に埋めて供養したところ、人面瘡はしゃべらなくなり、やがて腫れ物の傷口も閉じて消えたといいます。
この人面瘡。
口を閉ざしました。
・口を閉ざす=傷口も閉じて=沈黙する
・『諸国百物語』(作者不詳・1677年刊行の怪談集)
 




