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359 怪虫1
怪虫は幕末明治期の画家、平尾魯遷著『谷の響』に次のような話が記されています。
「文政年間のある年。
一太郎という12歳の少年は、尻に腫物ができてひどく痛み、食も絶えるばかりであった。
10日ほどのち、腫物の口から白い虫が2匹出てきた。
1匹は長さ10センチほど、もう1匹はやや短く、ともに出てからまもなく死んだ。
この少年は元来病身で、虫を吐き出すことがよくあり、あるとき25センチぐらいの虫を吐き出した。
それには目がなく、一方の端が10センチばかり二股に分かれていて、活発に動いた。
父親が酒漬けにして保存しようと酒を出すと、虫は自らその酒に這い寄ってなめ始めた」
この怪虫。
酒が好物らしく目がありませんでした。
・目がありません=それには目がなく
・目がない=たまらなく好き
・平尾魯遷(ひらおろせん・1808~1880・画家、国学者)
・『谷の響』(たにのひびき・説話、奇談)




