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341 雷玉
雷玉は江戸時代後期、天野政徳著『天野政徳随筆』に次のような話があります。
ある夏の日。
嵯峨野近辺の民家の軒先に落雷がありました。
留守番をしていた老人は耳が聞こえなかったことから驚くこともなく、落ちてきた雷の上に行水のタライをかぶせました。
下から押し上げるのを押さえているうち、次第に雨もやみ、夕日が差してきました。
老人がタライを取ってみると、雷の気が凝り固まって一塊の玉と化していました。
玉は灰色で大きさは手まりくらい、石でも金属でもなく、手に取って透かすと、水晶玉に炎を閉じ込めたようで、ぼんやり透き通った中に火の燃えるさまが見えたといいます。
この雷玉。
こうしてタマニ炎が見られることがありました。
・タマニ=たまに=玉に
・天野政徳(あまのまさのり・1784~1861・歌人、国学者)
・『天野政徳随筆』(あまのまさのりずいひつ・随筆)




