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339 チリモヌ
チリモヌという妖怪がおります。
鹿児島県奄美大島に伝承があり、江戸時代末期、奄美大島に島流しになった薩摩の上級武士、名越左源太が奄美大島の自然や民俗などを記録した『南島雑話』に次のようなことが記されています。
「チリモヌは色が薄黒くて尻尾は短く、姿かたちは豚の子のようで、猫にも似ていたといい、空想上の生き物とみる人もいれば、かつていた希少動物とみる人もいる。
また不浄の獣で人が死んだ際、死体の下に敷いたむしろなどに宿り、これに股をくぐられると病気になって死んでしまうので、これに出遭った際は股の間をくぐられないよう、足を交差させながら歩いたという」
このチリモヌ。
トンでもなく恐ろしい獣でした。
・トンでもなく=豚でもなく=とんでもなく
・名越左源太(なごやさげんた・1820~1881・薩摩藩士)
・『南島雑話』(なんとうざつわ・奄美大島の地誌)




