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337 常元虫
常元虫は江戸時代後期、山崎美成の『三養雑記』に次のような話があります。
天正年間。
近江国出身の南蛇井源太左衛門という浪人は、盗賊や殺人など悪事の限りを尽くしていたのですが、老いると出家し、常元と改名して故郷の別保村で暮すようになりました。
その後。
常元は過去の悪行ゆえに捕えられ、見せしめのために木に縛りつけられて断罪されたうえ、その遺体は木の根元に埋められました。
翌年の夏。
遺体を埋めた木の根元から、おびただしい数の虫が現れ、それらはまるで人間が後ろ手に縛られたような姿に見えました。
その後。
虫たちは羽化を始めましたが、その場で次々と殺されていきました。
この常元虫。
ウカウカできませんでした。
・ウカウカ=羽化=うかうか
・うかうか=ぼんやり時を過ごす
・山崎美成(やまざきよししげ・1796~1856・随筆家)
・『三養雑記』(さんようざっき・随筆)




