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330 大かむろ
大かむろという妖怪がおります。
水木しげる氏などの著書に見られ、正体は狸が化けたもので、巨大な顔をしていたとされています。
この大かむろは家の者が庭などで物音を聞き、何ごとかと思って戸を開けたりすると現れるのですが、驚かすことだけが目的で、特に人に危害を加えることはありませんでした。
ある屋敷。
ガタゴト、ガタゴト……。
この夜も庭で物音が始まります。
――今夜も来やがったな。
家主がうんざりしながら庭に出ると、そこにはいつものように顔の大きな化け物が立っていました。
大かむろです。
大かむろは当然のようにいばって言います。
「おい、何かうまいものを食わせろ」
この大かむろ。
いつだって大きな顔をしていました。
・大きな顔=顔の大きな化け物
・かむろ=本来は児童期のおかっぱの髪型
・大きな顔をする=いばった顔つきや態度
・水木しげる(1922~2015・漫画家、妖怪研究家)




