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320 蔵の大足
蔵の大足は怪異の一種です。
この怪異は明治時代前期まで伝えられ、日刊新聞の前身『やまと新聞』の明治20年4月29日付の記事でも報じられました。
嘉永年間。
江戸六番町の御手洗主計という旗本の家で、あるとき雑物庫の戸がひとりでに開いて、そこから巨大な足が現れました。
これを退治しようと、主計が刀で斬りつけるもまるで煙を斬るようでした。
また祈祷で追い払おうとすると、祈祷師を踏みつけたうえ、雑物庫の中を滅茶苦茶にして暴れました。
その後。
足を洗ってやると、おとなしく引っ込むようになりました。
以来、悪さをやめたどころか、蔵に侵入した泥棒を捕まえたこともあったといいます。
この蔵の大足。
足を洗ったのでした。
・足を洗う=悪事や、好ましくない職業の世界から抜け出る
・嘉永年間=1848年~1855年
・明治二十年=1887年




