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313 箕借り婆
箕借り婆という妖怪がおります。
関東地方に伝承があり、容姿は一つ目の老婆で、妖怪仲間の「一つ目小僧」を伴って人家を訪れ、箕や人間の目玉を借りていったといいます。
一つ目の化け物は目の多いものを苦手としていることから、人々はこれを避けるため、門戸に籠や笊を出したり、目籠を竿の先に取り付けて棟に立てました。
この日。
箕借り婆は一つ目小僧を連れ、ある一軒の商家に押し入りました。
主人が二人を見て首をかしげます。
「何の用だ?」
「箕借り婆という者だ。蓑を貸せ!」
「とんでもない」
「じゃあ、目玉を貸せ!」
「さあ帰って、帰って!」
主人の態度はたいそうそっけなく、二人に目もくれませんでした。
・目もくれない=目をくれない=見向きもしない
・箕=穀物の選別や運搬、乾燥のための農具




