312/924
312 乳鉢坊
乳鉢坊という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にあり、銅盤を頭にかぶった人の姿で、瓢箪の妖怪の瓢箪小僧と共に描かれています。
詳細は不明ですが、銅盤を打ち鳴らして大きな音をたて、まわりを驚かせたとしています。
ちなみに乳鉢は固体の粉砕などに使う鉢、銅盤は僧侶が法会を行うときに使用した金属製の輸入楽器であり、芝居などの鳴り物にも使われました。
室町時代に描かれた『百鬼夜行絵巻』にも同じ形状の妖怪がいることから、これに目をつけた石燕が『百器徒然袋』にもあえて取り入れ、新たな名前をつけたのであろうといわれています。
この乳鉢坊。
鳴り物入りだったといいます。
・鳴り物=楽器=鳴り物入り
・鳴り物入り=おおげさに宣伝する
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)
・『百鬼夜行絵巻』(日本の絵巻物で多数の作品が現存)




