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308 羊頭の神
羊頭の神は昔話の一種で、大正二年刊行、藤波山人著『ボビーさん新お伽噺』に次のような話があります。
ある冬の寒い日。
羊頭の神は飢えと寒さに苦しんでいる迷える旅人を助け、自分が住む穴へと連れていきました。
その道中。
旅人が手にしきりと息を吹きかけます。
羊頭の神が問いました。
「なぜそんなに吹くのか?」
「指を暖めているのです」
穴に着いて温かい焼き芋を与えたところ、旅人はその芋にも息を吹きかけます。
「なぜまたそんなに吹くのか?」
「熱いから冷ますのです」
「熱と冷とを吐き出す、そんな恐ろしいものと一緒にはいられない」
羊頭の神は住処を旅人にゆずって出ていきました。
その後。
羊頭の神は迷える羊となったといいます。
・迷える羊=迷いの多い、弱い人間のたとえ。
・『ボビーさん新お伽噺』(大正時代の児童読み物シリーズ)




