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302 怨霊蛙
怨霊蛙は江戸時代中期、作者不詳の『大和怪異記』に次のような話があります。
その昔。
某侍が若党を使いに出し、それが帰ってくるとすぐに別の使いに出そうとし、下女がそれを若党に伝えたところ、若党は「またか」と不平を漏らしました。
その後。
下女に告げ口された若党は、怒った主人によって手討ちにされました。
一年後の同じ日。
かの下女が主人の幼子を連れて庭を歩いていたところ、そこへ蛙が飛び出してきて、下女に向かって尿をかけました。
その尿はいくら洗っても落ちず、このあと下女が患って死んでしまったことから、蛙には若党の怨霊が憑いていたのだと噂されました。
この怨霊蛙。
怨霊が離れたあとはケロッとしていたといいます。
・ケロッと=けろりと
・『大和怪異記』(作者不詳・1709年成立・怪談集)




