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30 手の目
手の目という妖怪がおります。
これは江戸時代中期、鳥山石燕の『図画百鬼夜行』にあり、手の目は目が顔ではなく両手の平に描かれてあります。
また岩手県に次のような話が伝わっています。
ある夜。
旅人が淋しい街道を歩き進んでいたところ、盲人が近づいてきて、知らない者の居場所をたずねてきました。
その盲人の両手の平には目玉があり、旅人が驚いて宿へかけ込むと、宿の主人がその盲人のことを話してくれました。
「数日前あの場所で、盲人が悪党に殺されて金を奪われたのです。死んでなお仇を探しているようで、怨念から手の平に目ができて探しているのです」
この手の目。
旅人を当てにしたのがまちがいで、人を見る目がありませんでした。
・人を見る目がない=盲人=人を判断する眼力がない
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)




