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296 すくも虫
すくも虫は妖虫の一種で、かつての越後国に次のような話が伝わっています。
その昔。
越後国のある村に、番太郎という男が娘と二人で暮らしていました。
ある日。
番太郎が畑仕事をしていると、土の中から小田原提灯ほどもあるすくも虫が出てきました。
鍬ですくも虫の背を叩いてみましたが、それは石のように固く、そこで番太郎が煙草の灰を落とし続けると、すくも虫は死んでしまいました。
その夜。
番太郎は夜番に出て、一人で家にいた娘の枕元に怪しい者が現れ、娘がそれに気がつくと影のように消えました。
その後。
怪しい者は夜な夜な現れるようになり、やがて番太郎は原因不明の病気で死んでしまいました。
この番太郎。
虫が好かない男でした。
・虫が好かない=どことなくいやな感じがして気にいらない
・小田原提灯=同じ直径の蛇腹形状の提灯




