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295 古籠火1
古籠火は怪火の一種です。
これは宮城県仙台市出身の小説家、山田野理夫の『東北怪談の旅』にあり、山形県に現れたものものとして次のような話があります。
ある北国の藩。
田村何某は江戸勤めを終えて、国元の古屋敷で暮らし始めました。
ある晩、座敷の外が急に明るくなったので、田村が庭に出てみると灯籠に火が灯っていました。
「誰が灯籠に火を入れたのだ?」
家人や奉公人にたずねてみましたが、火をつけた者は誰一人いませんでした。
「では、どうして勝手に火が灯るのだ?」
老いた奉公人が教えます。
「あれは古籠火というもの。古い灯籠は、あのように気を利かして火を灯すといいます」
この古籠火。
ヒの打ち所がない灯籠でした。
・ヒ=火=非
・非の打ち所がない=非難すべきところがない
・山田野理夫(1922~2012・小説家、詩人)
・『東北怪談の旅』(1974年刊行・怪談集)




