293/921
293 機織姫
機織姫は伝説の一種です。
これは福島県南相馬市に次のような話が伝わっています。
その昔。
二堂という男が、上真野村の山神社前の滝にあった桜を伐っていて、鉈を淵に落としました。
その直後。
淵の中から美しい女が現れ、「機を織りながら花見をしていたのに、あなたが桜を伐ったので鉈を取りあげました。このことは決して誰にも話さないように」と告げました。
二堂が帰宅すると、自分の三回忌の法事がなされていて、人々は二堂を見て驚きました。
二堂は淵でのことを語ってしまいます。
そのとき家の前を美しい女が通りました。
――あの女では?
二堂はハタと思いましたが、ときすでに遅く、その場で死んでしまったといいます。
・ハタと=機=ハタと
・ハタと=動作や状況が急に変わるさま
・機=織物を織る道具
・鉈・幅のある厚い刃物に柄をつけたもの




