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290 鯉女房
鯉女房という妖怪がおります。
これは日本各地にある異類婚姻譚の一種で、石川県などに次のよう話が伝わっています。
その昔。
病気の母親に鯉を食べさせたいと思った男は、知り合いから鯉を一匹分けてもらったのですが、家に帰る途中、その鯉が死にそうにピクピク動いてるのを見てかわいそうに思い、池に放してやりました。
その晩。
旅の女がやってきて男の女房になりました。
ある日。
女房は煮物の鍋に小便をしているところを男に見られてしまいました。
「ずっとあなたと一緒にいたかった」
恩返しのために人に変じて女房になったこと、小便でダシ汁を作っていたことを明かし、女房は涙ながらに池に帰っていきました。
この女房。
コイ女房でした。
・コイ女房=鯉女房=恋女房




