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287 野鉄砲
野鉄砲という妖怪がおります。
これは江戸時代後期、桃山人の奇談集『絵本百物語』にあり、正体はムササビが老いて妖怪化したものだとしています。
野鉄砲は人を襲うとき、口からコウモリのようなものを吐き出し、それで目と口をふさいで動けなくしてから血を吸いました。
ある日。
某猟師が仕掛けた罠を見てまわっていますと、一つの罠に野鉄砲がかかっていました。
男は野鉄砲の恐ろしさを聞き知っていましたが、無謀にも捕まえてやれと近づいていきました。
野鉄砲が口から黒いモヤを吐き始めます。
男はあわてて鉄砲に手をかけようとしましたが、この日は罠猟であったことから、あいにく家に置いていたのでした。
男は無鉄砲でした。
・野鉄砲=無鉄砲
・無鉄砲=是非や結果を考えずにむやみに行動する
・桃山人(とうさんじん・1804~1844・戯作者)
・『絵本百物語』(1841年刊行・奇談集)




