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286 ぬっぽり坊主
ぬっぽり坊主という妖怪がおります。
かの有名な俳人、与謝蕪村によって描かれた『蕪村妖怪絵巻』に登場しており、これはかつて京都市の帷子辻に現れたといいます。
ぬっぽり坊主は顔に目鼻がなく、尻の穴が目になっていて、その目は雷のようにビカビカと光りました。
この日も、ぬっぽり坊主は人通りの多い道で尻をまくり上げ、道行く娘らに尻の目を自慢げに見せながら歩きます。
「きゃあー」
「いやー」
娘たちが悲鳴を上げて逃げていきます。
ぬっぽり坊主にはこれがなにより至福の時で、娘らの黄色い声を聞いたり、あわてふためいた姿を見るたびに、尻の目がビカビカと光りました。
このぬっぽり坊主。
嬉しいと目を輝かせました。
・目を輝かせる=喜びや期待などで興奮する
・与謝蕪村(よさのぶそん・1716~1784・俳人、画家)
・『蕪村妖怪絵巻』(ぶそんようかいえまき・妖怪絵巻)




