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285 大座頭
大座頭という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にあり、大座頭は古い下駄を履き、杖をついて町を徘徊したとしています。
ある雨の晩。
某男は奇妙な座頭を見かけました。
雨の中、その座頭は三味線を肩にかけ、ぼろぼろの袴を身に着け、しかも裸足でした。
男が気になって、「どこへ行くのか」と声をかけると、座頭は「女郎家に三味線を弾きに行っております」と答えました。
――こいつは妖怪の大座頭だな。
男は正体を確かめようとあとをつけました。
座頭が女郎家に入ります。
濡れた足を手ぬぐいで拭き、懐から真新しい下駄を出して履きました。
――大座頭なら新品はないな。
座頭の正体。
下駄を履くまでわかりません。
・下駄を履くまでわからない=最後の最後までどうなるかわからない
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)




