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283 赤毛の牡牛
赤毛の牡牛という妖怪がおります。
これは長崎県雲仙市に次のような話が伝わっています。
ある晩。
桶屋の男が提灯を手に家路を急いでいると、いきなり提灯の灯りが消え、前方から何ものかが勢いよく突き進んできました。
――このままじゃぶつかってしまう!
男は身の危険を感じて避けようとしましたが、とても間に合いそうになく、このときさらに寒気もしてきました。
男は覚悟を決めるとあぐらをかいて座り込み、何ものかに向かって叫びました。
「生あるものなのか!」
すると男の目の前に、2頭の大きな赤毛の牡牛が現れ出ました。
2頭の牡牛が、あぐらをかいて座っている桶屋に気がつきます。
「おい、誰かおるぞ!」
「ほうってオケヤ」
・オケヤ=放っておけや=桶屋




