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28 画霊
画霊は怪異の一種です。
古くなった絵画を放置しておくと、絵の中の人物が画霊となって現れ、虫食いなどの修復を促してくるといい、藤原家孝の『落栗物語』に次のような話があります。
その昔。
某寺に六枚折りの屏風があって、それには美しい女が馬を引き連れて歩く姿が描かれていました。
ある日。
住職が久々にこの屏風を開くと、なぜか女の鼻がいびつに曲がっていました。
絵の中の女が口を開きます。
「馬の尻が臭くてたまりません」
屏風を折りたたむと、馬の尻が自分の鼻の上に重なるのだと言います。
「それはすまなかったな」
住職はさっそく絵師を呼び、女の曲がった鼻を描き直してもらいました。
この画霊。
オリに触れて鼻が曲がるのでした。
・オリに触れ=機会あるごとに=たたむと触れる
・藤原家孝(ふじわらいえたか・詳細不明)
・『落栗物語』(おちぐりものがたり・随筆)




