273/924
273 陰摩羅鬼
陰摩羅鬼は怪鳥の一種です。
これは仏教の経典『大蔵経』によると、新しい死体から生じた気が化身したものだとされ、江戸時代中期、菅生堂人恵忠居士の怪談集『太平百物語』に次のような話があります。
その昔。
宅兵衛という男が、寺のお堂でうたた寝をしていたところ、甲高い声がして大きな鳥が現れました。
宅兵衛が驚いて逃げ出し、物陰からそっと様子をうかがっていると、やがて怪鳥は寺から飛び去っていきました。
寺の長老の話では、その怪鳥は陰摩羅鬼というもので、仮置きした死人から生じたのであろうということでした。
その後。
怪鳥は二度と姿を現すことはありませんでした。
この陰摩羅鬼。
立つ鳥あとを濁さずでした。
・立つ鳥あとを濁さず=立ち去るときには後始末をきちんとしておかなければならない、引き際は潔くあるべき
・菅生堂人恵忠居士(読み不明)
・『太平百物語』(たいへいひゃくものがたり・怪談)
・『大蔵経』(中国における仏教経典の総集の呼称)




