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27 海女房1
海女房という妖怪がおります。
これは海で水死した女の化身だといわれ、島根県の出雲地方に次のような話が伝わっています。
ある晩。
某漁師の家に、赤ん坊を抱いた怪しげな女がやってきました。
漁師はすぐに海女房だと気がつきました。
海女房が言います。
「何か腹を満たすものはないでしょうか?」
「鯖の塩漬けなら百尾ほどあるが……」
漁師は土間に置かれた桶を指し示しました。
「それだけあれば十分です」
海女房は赤子を抱いたまま、片方の手で桶の重石を軽々と持ち上げました。
漁師はそのすきに家から逃げ出しました。
「くそー、たった3尾しか入っておらんじゃないか」
この海女房。
漁師にサバを読まれました。
・サバ=鯖=サバを読む
・サバを読む=自分に都合のよいように数をごまかす




