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268 大鹿の怨霊
大鹿の怨霊は怪異の一種です。
これは奈良県吉野郡東吉野村に次のような話が伝わっています。
その昔。
吉野村の大又というところに、忠蔵という猟師が一人で住んでいました。
ある日。
忠蔵が薊岳に猟に出かけ、古池のそばで休んでいると、そこへ三つ又の角を持つ、数十年の齢を重ねたかという大きな鹿が現れました。
忠蔵が鉄砲で撃つと、倒れた鹿が古池に落ちて水面が真赤に染まりました。
忠蔵は死んだ鹿を背負って帰りました。
その夜。
忠蔵は熱を出して3日3晩うなされ、6日目に視力を失い、1か月後には死んでしまいました。
人々は大鹿の怨霊に祟られたのだと噂しました。
この忠蔵。
死シカ、最後は残されていませんでした。
・死シカ=死鹿=死しか




