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267 二龍松
二龍松は怪異の一種です。
これは愛知県東部に伝承があり、明治初期の漢学者、石川鴻斎著『夜窓鬼談』に次のようなことが記されています。
その昔。
三河国の長興寺の門前にあった「二龍松」と呼ばれる一対の松の木が、あるとき二人の童子に姿を変え、住職に硯と紙を求めてきました。
住職が求めに応じて硯と紙を与えると、童子たちはたいそう喜び、漢詩とおぼしき文章を走り書きで紙に記し、「これで、この寺に災いが降りかかることはないだろう」と告げて、再び松の木に戻りました。
その後。
残された書き付けは寺に大切に安置され、長らく人々の崇敬を集めたといわれています。
この書き付け。
マツキさえあれば寺で見られたといいます。
・マツキ=松の木=待つ気
・石川鴻斎(いしかわこうさい・1833~1918・漢学者、画家)
・『夜窓鬼談』(やそうきだん・怪談集)




