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263 東洞院の片輪車
東洞院の片輪車は江戸時代前期、作者不詳の怪談集『諸国百物語』に次のような話があります。
その昔。
毎夜、京都の東洞院通りに片輪車が現れて走りまわり、暗くなると人々はこれを恐れて通りを往来しませんでした。
ある晩。
某女房が格子から覗き見ていると、夜半過ぎ、片輪車の走る音が聞こえ、片方の輪が回りながらやってきました。
片輪車が女房に向かって、「そこの女。我を見るより、我が子を見るがよい」と、人のようにものを言いました。
その片輪車の輪には、股から引き裂かれた子供の足が引っ掛かっており、女房は驚いて子供のいる部屋へと駆け戻ったといいます。
この東洞院の片輪車。
子供の話はマタサキのことでした。
・マタサキ=股裂き=また先
・『諸国百物語』(作者不詳・1677年刊行の怪談集)
・東洞院通は京都の南北の通りの一つ




