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260 古庫裏婆
古庫裏婆という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』には座った老婆が描かれてあり、ちなみに名前の庫裏は僧侶の居住する部屋のことです。
この古庫裏婆。
昔は住職の妻だったのですが、夫に先立たれてからは庫裏に隠れ住むようになりました。
お供え物を盗んで食べるほか、墓地に埋葬された遺体を掘り起こして死肉を喰うという、そのあさましい所業ゆえに成仏がかなわず、ついには妖怪になったといわれています。
ある夜。
何代目かの住職が庫裏に入ったところ、隅の暗がりに古庫裏婆が座っていました。
このとき古庫裏婆は居眠りをしていたのか、気持ちよさそうに船をこいでいました。
コクリコクリ。
・コクリコクリ=居眠り=古庫裏婆
・庫裏=寺院で食事を調える建物
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)




