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251 毛脚
毛脚という妖怪がおります。
明治時代中期、石川鴻斎の怪談集『夜窓鬼談』に次のような話があります。
その昔。
豊橋の商人某は愛知県の本宮山に参詣に来て、その途中、山の中腹の木の根元で休んでいたところ、色白の美しい娘が着物の裾を乱して登ってきました。
娘は母の病気平癒のために来たと話し、商人と共に山を登ることになりました。
その途中。
娘の足袋の紐がほどけたので、結んでやろうと商人がかがむと、女は自ら着物の裾を持ち上げました。
その脚は杵のようにたくましく、針のような毛がびっしりと生えていて、女はいつかしら身の丈7、8尺の馬のような化け物に変じていたといいます。
この毛脚。
馬脚をあらわしました。
・馬脚=毛脚=馬のような化け物
・馬脚をあらわす=隠していたことがあらわれる
・石川鴻斎(いしかわこうさい・1833~1918・漢学者、画家)
・『夜窓鬼談』(やそうきだん・怪談集)




