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241 能登の化け物
能登の化け物は江戸時代中期、菅生堂人恵忠居士の『太平百物語』に次のような話があります。
その昔。
能登に化け物屋敷があり、そこはしばらく住む者がいなかったのですが、やがて幾田という侍が移り住みました。
ある晩。
幾田が便所で座っていると、毛の生えた手が尻をなでました。
幾田はその手を掴んで外へ出ると、上になり下になりして格闘しました。
最後は幾田が組みとめて退治するも、自分もあちこちに傷を負いました。
化け物は年を経た猿で、それが棲んでいたらしき屋敷の裏の大木を伐り倒すと、樹上にはそれまで喰った人の骨が積み重なっていたといいます。
この能登の化け物。
便所で男の尻をなでるとはずいぶんヒトヲクッタ猿でした。
・ヒトヲクッタ=人を喰った=人を食った
・人を食った=相手を小馬鹿にした態度
・菅生堂人恵忠居士(読み不明)
・『太平百物語』(たいへいひゃくものがたり・怪談)




