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236 姥が火1
姥が火は怪火の一種です。
これは大きさ30センチくらいの炎の中に老女の顔があるといい、江戸時代中期、菊岡米山著『諸国里人談』に次のような話があります。
その昔。
某神社では深夜になると、灯籠の明かりが消えるようになりました。
――油を盗むやつがいるにちがいない。
神主は境内に隠れて見張りました。
その晩。
どこからともなく火の玉が現れ、それには白髪の老婆の顔がありました。
老婆が灯籠から油壷に油を移し始めます。
神主は恐ろしくて、とても出ていくことができませんでした。
と、そのとき。
老婆が油で手を滑らせ、持っていた油壷を落としてしまいました。
油壷から油が流れ出ます。
油断は禁物でした。
・油断は禁物=常に注意しておくべきである
・菊岡米山(きくおか・1680~1747・俳人、作家)
・『諸国里人談』(しょこくりじんだん・奇談・怪談)
 




