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233 置行堀
置行堀という妖怪がおります。
置行堀は江戸の本所を舞台とした「本所七不思議」の一つで、その正体は河童であるとも、狸の化け物であるともいわれています。
ある日。
仲の良い町人たちが集まり、墨田錦糸町あたりの堀川で釣りをしたところ、魚籠からあふれるほどの魚が釣れました。
夕暮れどき。
「魚を置いていけ!」
堀の内から怪しい声がしました。
その声に驚いた町人たちは、釣り道具や魚籠を捨て置いて、一目散にその場から逃げ出しました。
その後。
町人の一人がこっそり、置いてきた釣り道具を取りに戻りました。
そして魚籠を手にかけたとき、堀の内から再び怪しい声がしました。
「魚籠は置いていけ!」
ビクッ!
・ビクッ=魚籠
・本所七不思議=本所(東京都墨田区)に江戸時代ころから伝承される奇談・怪談




