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231 鼠の大勢
鼠の大勢は怪異の一種です。
これは加賀藩士、森田盛昌の随筆『咄随筆』に次のような話があります。
天和二年。
江戸本郷で起きた火事で加賀藩の屋敷も焼け、その再建のため大工が加賀から江戸へと呼び寄せられ、十右衛門もその一人でした。
ある夜。
十右衛門が宿の勝手で寝ていると、鼠が布団の上を這いまわるので、その鼠を捕えて殺すと、別の鼠がやってきて体の上を跳ねるようになりました。
やがて鼠は数を増し、懐に入り込んだり、体に喰らいつくようになりました。
初めこそ掴んで投げ捨てていましたが、鼠は足の踏み場もないほどに増え、こうなっては寝るどころではなくなりました。
その晩。
十右衛門は一睡もできず、朝までネズミいました。
・ネズミ=鼠=寝ずに
・森田盛昌(もりたもりまさ・1667~1732・加賀藩士)
・『咄随筆』(はなしずいひつ)




