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23 一本だたら1
一本だたらという妖怪がおります。
紀伊半島の熊野地方に伝承があり、長い棒のような体に一つ目と一本足がついており、雪が積もった道に一本足の足跡を残したといいます。
名前の「だたら」はタタラ師からきており、鍛冶師が片足でふいごを踏むことで片足がなえ、片方の目で炉を見るため片目がつぶれることによります。
ある年の暮れ。
武士が雪の舞うなか、峠の松の街道を歩き進んでいると、向こうから宙返りしながらやってくる者がいました。
それは一つ目一本足で、電柱に目鼻をつけたような奇妙な姿でした。
「化け物め!」
武士はとっさに刀を抜いて斬りかかりました。
「待ってくだされ! デンチュウでござる、デンチュウでござる」
・デンチュウ=殿中=電柱
・殿中でござる=忠臣蔵の松の廊下事件
 




